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マリベルはがっかりしていた。
アリエラは戻ったけれどエルミナはこの冬も戻らないらしい。
何度手紙を送ってもエルミナから返事が来たことはない。
「まだ気にしているのかしら? ミナ姉さまのせいじゃないのに」
人生のほとんどを過ごしたベッドの上で、マリベルはひとり呟く。
マリベルの体を蝕んだのは青い毒物だけではなかった。
マリベルはそもそも糖質をほとんど受け入れられない体をしていたのだ。
そのことを幼い子供たちが少しも理解してなかったことで、あの事件が起こってしまったのだ。
結果としてマリベルは生死の境をさまよったが、金平糖を食べたことを後悔したことはない。
あの日もし金平糖を口にしていなければ、マリベルは幸せな甘い味を知ることさえできなかったのだ。
今もマリベルは金平糖の夢を見る。
エルミナの幸せな人生を盗んでしまったという罪悪感を感じながらも、現実では味わうことのできないその甘さをマリベルは夢の中で堪能するのだった。
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