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「人をお探しのようですが、我々ではいかがですか?」
「私たちに気を使ってくださったのはわかりますが、ひとりで行くつもりだったなんてひどいですよ」
「僕だって仲間外れは嫌だよ」
昨日帰したはずの護衛騎士ガイルと侍女セシル、そしてこの旅の準備を手伝ってくれた少年ルアンだ。
「なんで? 帰れって言ったのに」
エルミナは涙目になった。
家にいたころからずっと一緒だったガイルとセシルは、他の誰がエルミナに冷たくしてもいつも優しく変わらなかった。
ルアンもどんなうわさを聞いてもどこ吹く風で懐いてくれていた。
エルミナはそんな3人だからこそ巻き込みたくなくて、追い返して知らせずに出てきたのにと唇を噛む。
岩山は魔物の住む恐ろしいところだ。
侍女や御用聞きの少年が簡単に行けないのはもちろん、護衛騎士といっても騎士団を首になるような実力のガイルでは危険すぎるのだ。
彼らは私に優しく甘いから、簡単には引き下がらないとわかっていた。
だからこそ、いろいろ策を練って上手く帰らせることができたと思っていたのに、ガイルもセシルもお見通しだったわけだ。
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