第4章

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「ありがとうございます…」 直視出来なくて俯いてお礼を伝えると 「ポーズ考えてきた?」 優しい声が耳元で聞こえ、肩に力が入る。 「あの…出来なかったら言ってください…1つは壁ドン顎クイが良くて…2つ目はバックハグ…3つ目は横に並んでピースしてほしいです…」 図々しいお願いってことは重々承知。だけど、言わずと知れたツバサのファンサービスは無理なこと以外は引き受けてくれるって言うのはファン界では有名だし、次にいつ会えるか分からないので、せめてもの記念で撮っておきたい。 「ええよ。じゃあまずはピースから撮るか。笑えよ?」 自然に私の肩になんかを抱いてくれて、チェキを持っているスタッフに向かってピースをしてくれて、私も慌ててカメラに向かってピースをした。 「ちゃんと笑えた?撮り直しは出来ないねん。じゃあ次はバックハグするわ」 緊張しているのが伝わっているのか優しく声を掛けて、私の後ろに回りこんでくれる。でもそうか。さっきから私の体には力が入っており、肩を抱かれた時にそれが伝わったのだろう。でもそんなの緊張しない方が無理だよ。だってやっとの思いで想い続けてた人が今こうやって私の目の前に居るんだから。ツバサの瞳に映って私だけに微笑んでくれたり喋ってくれるんだから。画面越しで見るよりも何倍もかっこいいんだから。フワッとツバサの両腕が私の体を包み込み 「アイリ、笑えよ」 なんて耳元で囁かれて笑うどころか恥ずかしさのあまり顔を下に向かせてしまった。
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