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「わっ」  突然、視界が遮られ、一瞬パニックになった。きっと傍から見たら、俺は間抜けなダンスを踊っているように見えたと思う。 「なんだよこれ」  目に見える景色がピンク一色になっていた。顔に何か貼り付いたらしく、俺は慌ててその何かをむしるようにして取った。  パンティーだった。桜くらい薄いピンク色のパンティーだった。それを今、俺は握っている。これが顔に貼り付いていたのか。でも何故。風に飛ばされてきたのか、落ちてきたのか。  俺が困惑していると、周りでどよめきが起きた。顔を上げてみると、直線に伸びる道路に散らばるようにして、幾人かのおっさんがいた。そのおっさんたちは、何故か各々にして悔しそうな素振りを見せていた。そのうちの一人が俺に近づいてきて、何かされるのかと思ったが、そのまま舌打ちをして通り過ぎて行った。  意味が分からず首を傾げていると、「すみませ~ん」と上から女の声がした。傾げていた首をそのまま真上に向けると、マンションなのかアパートなのか分からないが、四階らへんのベランダで女が手を合わせていた。遠目でもわかる、とびきりの美人だった。 「落としちゃいました。今取りに行くんで、ちょっと待っててもらえますか」 「は、はーい」  咄嗟に出した声は、多分しっかりと届いていないだろうなと思った。急なことで、喉が働かなかったのだ。  それにしてもラッキーである。ラッキースケベだ。あの女はよくこれを履くのだろうか。Tバックとまではいかないが、かなり際どいパンティーをしている。これは相当痴女だぞ。  今度は自ら顔に近づけようとした時、ふとたくさんの視線を感じた。前を向いてみると、俺は思わず笑いそうになった。さっきのおっさんたちが揃いもそろって、羨望の眼差しを俺に向けていた。
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