第1回お見合いマズワン・タメシーニ

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第1回お見合いマズワン・タメシーニ

この日、貴族同士の見合いが行われる。 男性側はもちろんタブラリゴ・クイサーブ(34歳)。 女性側は隣国のマズワン家長女マズワン・タメシーニ(24歳)という。 マズワン家は可も不可もない中流貴族。 マズワン三姉妹のうち次女、三女ともに同等の中流貴族の男と結婚した。 縁が無く取り残された長女の嫁ぎ先に腐心していたマズワン家当主。 その折、奇しくもあの大名家タブラリゴの長男がフリーになったと聞きつけた。 これ幸いと手続きを進め、今日の日を迎えたという事だ。 「ねえ、アンナ緊張するわ」 侍女のアンナを引き連れてマズワン・タメシーニはタブラリゴ宮廷の庭に足を踏み入れた。 今日は天気もいいので中庭のテラスでお見合いをしようという運びだ。 「大丈夫ですよお嬢様、いつも通りの振る舞いで」 侍女のアンナはタメシーニと同い齢、付き合いも長く上下関係はあるが普段は友人の様に接している。 「タブラリゴ・クイサーブ。どの様なお方かしら?」 「既に中庭でお待ちとの事です、急ぎましょう」 「うん」 中庭へ進むと二人の男性が見えた、どちらかがクイサーブもう一人は護衛だろう。 だがどちらも木陰のせいで顔が見えない。 「どちらがクイサーブ様かしら?」 「ああ、右の方ですよ。タブラリゴ家当主の証ウホウホこん棒を腰につけておられますわ」 「分かった」 二人はクイサーブの前に立つとすぐに深々とお辞儀をして 「お待たせ致しました、ワタクシ・・・はうわっ!!!!」 初めてクイサーブの顔を見たタメシーニは挨拶の途中で絶句した。 「どうしましたお嬢様?こちらがクイサー・・・はうわっ!!!」 アンナもクイサーブの顔を見てセリフ途中で絶句した。 「どうされた?ご婦人方、我がタブラリゴ家長男にして次期当主のクイサーブである。お初お目にかかる」 「え、ええ・・・クイサーブ様、少し失礼」 「ん?うむ」 タメシーニはアンナの袖を引いてクイサーブと距離を置いた。 「ア、アンナ!何あの顔⁉あれがクイサーブ様⁉人間なの⁉あれは顔なの⁉」 「は、はい、一応、目と鼻と口が有りましたから」 「何言っているの!目と口しか無かったわ!」 「いえ、その間に鼻と鼻の穴がございました、少々大きめでしたが」 「あれ鼻の穴だったの⁉私はてっきり魔界へのゲートと思ったわ」 「いえ、児玉スイカなら入りそうなほど広がっていますが、あれは鼻の穴でございます」 「わ、分かったわ・・・戻りましょう」 改めて挨拶をし直すと設置されたテーブルチェアに腰を掛けるクイサーブとタメシーニ。 いよいよお見合いが始まった。 しかし話すのはクイサーブばかり、タメシーニは脂汗を垂れ流しながら顔面蒼白のまま何とか相槌だけを打つ。 さすがにその様子を不思議に思ったクイサーブは 「ミス・タメシーニ、気分でも悪いのか?」 と声を掛けたが反応が薄い。 ガタガタと震えだすタメシーニ。 ガタガタガタガタ・・・・・・・震えは増すばかり。 「い、いや・・・」 「ミス・タメシーニ?」 「お嬢様?」 「いやーーーー!やっぱりあれは魔界へのゲートよ!死にたくなーーーい!」 叫びながら脱兎の如くタメシーニは中庭から出て行ってしまった。 「どういう事だ?」 状況が全く理解できないクイサーブ。 「お・・・・おほほほほほほ!お嬢様の持病がこんな時に!!申し訳ありません、失礼します!お嬢様~!!!」 アンナも音速で中庭から出ていった。 「なにがなんだか・・・」 ただただクイサーブは呆けていた。
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