1289人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は今でも、桜が社長をやるべきだと考えている。
桜の聡明さは誰もが認めるはずだし、服部トレーディングのグループ会社になるなら、なおさら桜が適任だ。
グループ全体の女性社員の士気も上がる。
「桜、会社のことなんだけど・・さ」
「・・うん。それは・・ベッドでする話じゃないよね」
スルリと俺の腕を抜けて、桜はベッドを出た。
もう表情が切り替わっている。
「ちゃんと聞くわ」
俺たちは服を着て、リビングに移動した。
「桜、社長続けてみないか?」
桜の好きなカフェオレを用意しながら、横で見ていた桜に問いかけた。
「どうして? それに、私が社長を続けたら、直生はどうするつもりなの?」
俺は桜にカフェオレを渡し、自分用にエスプレッソを淹れてひと口飲む。
「俺は、変わらず桜をサポートするよ」
「え? 『秘書』を続けるつもりなの?」
「そう」
「そう・・って、そんな簡単に・・」
「俺は、トップに立つより裏方が性に合ってる。兄貴や桜のために、影でいろいろ動き回るのがね」
「直生・・。でも嫌じゃないの? 夫が『秘書』で妻が『社長』だなんて・・」
「なんだ、桜。俺をそんな器の小さい男だと思ってるのか?」
そう言って軽く睨むと、桜は『降参』と言わんばかりに両手を上げて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!