5.決断

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桜は桜なりに、ずっと悩んでいたと言った。 女性が社長に就くことは、決して珍しいことではなくなったけれど。 でも業界によっては、古い慣習のようなものが残っていたり、ジェネレーションギャップがあったりと、上手くいかないことだってある。 特に俺が秘書を離れてからは、藤澤親子によって次々に仕掛けられた波に、精神的にかなりまいったのだという。 「直生がきてくれなかったら、全部手放していたかもしれない。もしそうなっていたら、会社は・・社員は・・」 苦しそうに桜が俯く。 前社長はそういった状況が起こることを見越してか、桜に書き残していたのだという。 『どうしても別の道を選びたくなったら、必ず服部に相談するように』 そして親父には、もしその時が来たら受け入れてやってほしい・・と。 「おじさまや直生に、会社を押し付けようとして・・ひどい社長よね、私」 「そうじゃないだろう? 会社と社員のことを守ろうとしたからじゃないか」 「周りはそうは見てくれないわ」 「なんだ、俺の言うことより、周りを気にするのか?」 「・・・・」 「それに俺は、絶対に1ヶ月で戻るって決めてた」 「・・そういうの、先に教えてよ・・」 「『絶対』は無いからさ」 「バカ・・・・。本当に辛かったんだからね」 「もう絶対に離れないよ」 「『絶対』は無いって言ったくせに」 「愛してるよ」 そんなこと言って、騙されないからね!と言いつつ、照れている桜がすごく可愛いかった。
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