5.決断

12/18
前へ
/117ページ
次へ
俺は桜に、桜が社長を続ける意味を伝えた。 山脇物産のためにも、服部トレーディングのためにも。 そしてそこで働く、たくさんの女性たちのためにも。 「だいぶ持ち上げられてる感はあるけど、直生がそこまで言うなら・・」 仕方ないわね、と諦め顔で笑った。 それから何日か経った後、結婚のこと、桜が社長を続けることを親父に報告した。 「そうか・・良かったな。これで桜ちゃんも俺の娘だ。いつでも頼ってくれて構わないよ。直生よりも頼りになるんじゃないか?」 「ふふ。そうかもしれませんね」 「そんなわけないだろう。何言ってんだよ、親父まで」 「ただ・・。わりと大きな提携先をひとつ失ったので、その分のリカバリーは急がなければと考えているところです」 「そうか・・あては何かありそうか?」 「あるよ」 そう答えた俺に、本当?と桜が視線を向けた。 「俺が何しに南米まで遠征したと思ってるんだよ」 そう言って、桜の耳に揺れているピアスに触れた。 「え? もしかして・・これを?」 「そう、契約してきた。愛する妻へのプレゼントってところだな。・・・・西川、契約書あるか?」 はい、と木内社長とブラジルで交わした契約書を桜に渡す。 「すごい! あんな短い期間で・・いつの間に・・」 「だろ? 慎重派の親父と一緒にされちゃ困るんだよな」 そう言ってドヤ顔をした俺を見て、親父と桜が顔を見合わせて笑っていた。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1286人が本棚に入れています
本棚に追加