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翌朝、俺は久々に『秘書』スタイルで山脇物産に出社した。
「室長、おはようございます」
「おっ、おぅ。今日はどっちだ?」
「やだなー『秘書』ですよ。室長」
「紛らわしいから、もう俺の前に『専務』で現れるなよ~」
それを聞いて、桜が社長室の椅子で笑っている。
少し前に俺が見立てたスーツが、とてもよく似合っていた。
「社長、今日はお昼前に銀行の支店長がお見えになりますよ」
「服部、切り替えが上手いわ。『秘書』で『専務』でさらに『夫』なんて・・俳優も顔負けね」
「お褒めに預かり光栄です」
「ふふっ、直生ったら」
「午後は、フェアトレードのガラスアクセサリーが届きます。先日提携した、アレですね」
「楽しみだわ。『専務』が直々に持ってきてくださるのかしら?」
「いえ、秘書の西川が持参すると」
それも楽しみね、と言いながら、桜は溜まった決裁を次々と処理していく。
『妻』のそんな姿を眺めながら、俺も今後のスケジュール調整や書類整理を始めた。
ブブ・・ブブ・・。
デスクに置いてあったスマートフォンが震えている。
そこには、"藤澤"という名前が表示されていた。
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