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ある夜、俺はソファに座った桜を後ろから抱き締め、ずっと聞きたくて聞けなかったことを口にした。
「桜」
「ん?」
「俺が・・『別れてほしい』って言った時のことなんだけど・・」
「あー・・。あの時は本当に、この世の終わりじゃないかと思った・・」
ゆっくりと、噛み締めるように桜が言った。
「そうか・・。辛かった・・よな」
「うん・・。だって、待つことも許されなかったから何の拠り所も無くて。あの時は『愛してる』と、自分の想いを直生に伝えるだけしかできなかったし」
俺は何も伝えられなかったのに、桜が『愛してる』と言ってくれたことが救いだった。
桜に愛されている。
それだけで良かった。
「辛かったけど、自分が愛することの意味を知ったから。直生が私をどのくらい愛してくれるかじゃなくて、私が、どれだけ直生を想ってるかだなって」
今はとっても幸せよ、そう言って桜は俺を振り返った。
その目には、うっすらと涙が光っている。
「あーごめん・・。泣かせるつもりじゃなかったのに」
俺は指で桜の涙をすくった。
そしてもう一度、桜をぎゅっと抱き締めた。
「俺の全てを賭けて桜を一生守る。約束するよ」
「・・死ぬまで・・愛してくれる?」
「当然だろ。一緒にいすぎて飽きたとか言わないでくれよ」
俺は、桜の頬に手を添えて言った。
「愛してるよ、桜」
俺の溺愛は、永遠に終わらない。
〜 Fin 〜
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