聖夜

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 どうしてか、私は深い間柄の友達を作ることがいつからかできなかった。それは、見えない力関係や、読み取りきれない気持ちの数々がそうさせたのだとは思う。後になって考えれば私は、ただ純粋な友達が欲しかったのだ。気兼ねなく接せる、普通の友達。その人が私にはいないように思えた。どうしてそんな思考になったのか。もしかすると、錯覚や幻想、理想が幾らかはあるのだと思うが私の生の気持ちが願ったのだ。友達が欲しいのだと。  焼き終えたパンを皿に出す。バターを塗る。私はパンにはバターを塗って食べるのが好きだった。食べながらテレビを眺める。内容は先日から世の中をざわつかせているいじめが原因の事件だった。お母さんもテレビを見つめていた。コメンテーターやキャスターたちが相変わらず合っているのか、的外れなのかよくわからないことを言っている。改めて事件の内容を聞くと、男子生徒が複数の同級生からいじめられたことが原因で、いじめていた同級生をナイフで刺したのだった。幸い、刺された相手は軽傷だったようだが、男子生徒は警察署に連行された。その様子が、堂々と報じられている。世間や大人にはよほど衝撃だったようで、いろいろと騒いでいるみたいだった。お母さんも口を開けてその様子を見ていた。 「こんなことがあるのね」 「そうだね」  私は、こんなことがあり得る世界なのだと前々から思っていた。私たちはみんな、誰かに向けて鬱憤や不満、怒りを抱えている。だから、いつ、誰が、耐えきれなくなって何をしてもおかしくはないと思っていた。ただ、私の周りでそれが起きてないだけであって、世の中では頻繁に起こっているのだと感じていた。
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