聖夜

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 友美の家は私の家から遠かった。そのため、街の中心部を抜ける必要があったので、私は中心部へと繋がる大通りに入った。道は少しだけ混んでいて通り抜けるのに時間がかかった。交差点に入り信号待ちをしていると、横の広場に大きなクリスマスツリーが飾ってあった。すぐそばでは子供たちが楽しそうに遊んでいる。私にもああいう時期があった。無邪気な心で友達と遊んでいられた、楽しい時間。ところが、今はどうだろうか? 私が純粋に楽しいと思えることは気づけば年月を経て減っていた。もっと言えば、その時間はこれからもどんどん減っていくのだろうなと諦めているところがあった。そう考えただけで、私は少しだけ悲しくなった。そう考えている間に信号は青になった。私は再び自転車を漕ぐ。  友美の家を探し当てるのは大変ではなかった。彼女から教えてもらっていた住所を地図アプリで検索をかけて事前に付近の様子をチェックしていたからだ。それと、友美の家は広かった。  石崎友美の家は、言うなれば西洋風のお屋敷だった。ブランコが一つ置かれている広い庭。季節の花が咲いている花壇。車が三台くらいは入りそうなガレージ。建物は二階建てで、広さはざっと見てバレーボールのコート二面分くらいはあるように思えた。  私は敷地内に入って、自転車が何台も置かれている場所に自分の自転車を並べた。この自転車たちはおそらく、友美が誘った仲間たちの物だろう。私は鍵をかけて、荷物をカゴから出して肩にかけた。玄関まで歩いて、インターホンを鳴らす。すると、すぐに応答があった。 「はーい」 「あ、佐野です」 「あー由香里! 今鍵を開けるからそこで待っていて」
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