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友美の声だった。初めて彼女の家を訪れたせいなのか、なぜだか緊張してくる。程なくして、ドアの鍵が開けられた。扉が開くと、普段の私服とあまり変わらない姿の友美がいた。
「由香里! 待っていたよ」
「おじゃまします」
「どうぞ、どうぞ」
私は家の中に入った。玄関からして私の家よりも広かった。足元を見ると十人分くらいの靴が置かれており、横の方にも目を向けると数十足は入りそうな靴箱があった。靴を脱いで上がるとすぐに広い階段があった。周りには大きな花瓶や絵画が置かれている。私は彼女の住む世界はこんな所なのかと思った。
「広間は向こうよ。ついてきて」
友美の後ろを歩く。廊下にも高価そうな物がいくらか置かれていた。私は壁に掛けられていたバナナの絵を見つめる。この絵がいくらなのかは私にはわからなかったが、絵を見てお菓子を渡すことを思い出した。
「友美、ちょっと待って」
「どうしたの?」
彼女が足を止める。
「渡したい物が、あるんだ」
「なになに?」
気になるとでも言いたげな顔をして体ごとこちらを向いた。私は袋からお菓子を取り出して、彼女に見せた。
「このために用意したお菓子。どうぞ」
お菓子を差し出す。すると友美は嬉しそうにそれを受け取った。
「ありがとう! 嬉しい!」
「よかったよ。喜んでくれたようで」
彼女はそれを大事そうに抱えて、再び歩き始めた。私もついていく。
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