聖夜

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 彼女はまた遠い目をした。何か思うところがあるような言い草だった。そういえば、私は友美と倉持咲がどうして面識があるのかを全然知らない。そう思った私は思い切って、彼女に尋ねた。 「あの、友美と倉持さんの間に何があったんですか?」  かりんさんはそれから一分ほど言葉に詰まった。周りは私たちの会話に全然気付いてる様子はなく、私たちの間にはただ静寂があった。やがて、彼女はひそひそ声で事情を話してくれた。 「昔は、友美も倉持さんも仲が良かったんだ。だけどさ、二人の間になにか大きな出来事があったみたいで、それから友美は彼女のことを周到に攻撃するようになった。仲間外れにしたり、無視したり」 「そんな……」 「それで、倉持さん、その事が相当こたえちゃったみたいで、病院に通うようになったみたい。そして、倉持さんはなぜか折りたたみ式のナイフを持ち歩くようになったの」 「折りたたみ式のナイフ?」  かりんさんはジェスチャーで手のひら程の大きさだと教えてくれた。 「倉持さんは、何かに怯えるようになって、それから少し荒っぽくなった。中二の時なんかはたまに机とか椅子を蹴っ飛ばしてた」 「そんなに」 「一見すると怖いでしょうけど、あれは彼女にとって必要なことになってしまったんだと思う。ああやって、物に当たっておかないと心の平穏が保てない感じ」  私はなんて言えば良いのかわからなくなった。今度はこっちが返す言葉に詰まる。それを見たかりんさんは立ち上がって、水を持ってきてくれた。 「ありがとうございます」
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