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そう言ってかりんさんは私の隣からいなくなった。次第に友美は私の方へと近づいてくる。
「由香里もどうぞ」
友美がカードを差し出す。彼女の顔は笑っていた。私は彼女の顔をほんの一瞬見つめる。その表情には曇りな無かった。
「ありがとう」
私はカードを受け取った。
友美がこの場にいる全員に用紙を配り終えるとすぐにビンゴゲームが始まった。
「23番!」
友美がガラガラを回して、出てきた玉に書かれた数字を読み上げていく。豪華な景品が貰えるからなのか、室内は静かな熱気に包まれていた。
「だめね」
「あ、リーチ」
静かなこの空間に密かに声がする。ここにいるほとんどが真剣そのものでビンゴに挑んでいる。かく言う私もつい熱が入ってしまっていた。
「次、33番!」
友美がガラガラを回す。
「ああ、当たらないな。悔しい」
思わず声が出てしまった。周りの声も次第に大きくなっている。室内の熱気が盛り上がっているのが感じられた。そうしている間にも友美はまたガラガラを回した。
「45番!」
全員が用紙上の45番の数字を探す。すると、向こう側にいた誰かが手を挙げた。
「ビンゴ出た!」
その後、次々と「ビンゴ出た」の声が聞こえてきたが、ビンゴを三つ揃えた人はなかなか現れなかった。私に至っては、そもそもビンゴが一つも出せていない。決着がつかない中、会場の熱気は最高潮に達している。友美の顔を見ると、楽しそうだった。
「それじゃあ、次行くよ!」
友美がガラガラを回そうとした、その時だった。どこからともなくチャイムが鳴った。
「あれ、どういうこと?」
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