12人が本棚に入れています
本棚に追加
私は慌てて声をかけた。友美と彼女がここで言い争っているのを止めたかったからだ。
「由香里……、来ないで!」
だが、咄嗟に友美は私のことを拒んだ。
「どういうこと?」
私は思わず強い口調で友美に訊ねた。
「これは、私と倉持の問題なの! 由香里には関係ないことなの!」
彼女もまた強い声で言い切った。それに対して私は、これ以上は言えなかった。私にはこれ以上二人と言葉を交える勇気がなかった。それが、後々に命取りになることも知らずに私は、ここで言葉を止めてしまった。
二人の諍いは私の目の前でなおも続いた。
「なんで、私を拒むの?」
「あんたが気に食わないから!」
「どうして?」
倉持咲はついに彼女の方に近寄って両肩に手を置いた。だが、友美はそんな彼女の言葉に答えもせず、彼女の手を握り払う。そうして、彼女を突き飛ばした。
「きゃっ!」
倉持咲は大きな音を立てて一瞬にして床に倒れ込んだ。私は突き飛ばした友美の方を見る。友美の顔はどこかぎこちなく、でもスッキリしたような表情をしている。一方で倉持咲は半ば泣きそうな顔をして、倒れ込んだままだった。私はついに友美のことが理解できなくなった。どうして、ここまで執拗に倉持さんを拒むのか。その行動が私にはもう理解できなかった。自分の顔がこわばるような感覚に襲われた。すると、友美はこっちの方を向いた。
「何か、あるの?」
その目はどこか虚無のようなものを包んでいた。私はそれが怖くて、またしても何も言うことができなかった。
「ああ、ああ、あああ!」
最初のコメントを投稿しよう!