聖夜

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 私は慌てて声をかけた。友美と彼女がここで言い争っているのを止めたかったからだ。 「由香里……、来ないで!」  だが、咄嗟に友美は私のことを拒んだ。 「どういうこと?」  私は思わず強い口調で友美に訊ねた。 「これは、私と倉持の問題なの! 由香里には関係ないことなの!」  彼女もまた強い声で言い切った。それに対して私は、これ以上は言えなかった。私にはこれ以上二人と言葉を交える勇気がなかった。それが、後々に命取りになることも知らずに私は、ここで言葉を止めてしまった。  二人の諍いは私の目の前でなおも続いた。 「なんで、私を拒むの?」 「あんたが気に食わないから!」 「どうして?」  倉持咲はついに彼女の方に近寄って両肩に手を置いた。だが、友美はそんな彼女の言葉に答えもせず、彼女の手を握り払う。そうして、彼女を突き飛ばした。 「きゃっ!」  倉持咲は大きな音を立てて一瞬にして床に倒れ込んだ。私は突き飛ばした友美の方を見る。友美の顔はどこかぎこちなく、でもスッキリしたような表情をしている。一方で倉持咲は半ば泣きそうな顔をして、倒れ込んだままだった。私はついに友美のことが理解できなくなった。どうして、ここまで執拗に倉持さんを拒むのか。その行動が私にはもう理解できなかった。自分の顔がこわばるような感覚に襲われた。すると、友美はこっちの方を向いた。 「何か、あるの?」  その目はどこか虚無のようなものを包んでいた。私はそれが怖くて、またしても何も言うことができなかった。 「ああ、ああ、あああ!」
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