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すると、背後から倉持さんが起き上がって、友美を背中から蹴りつけてしまった。友美はその場に倒れ込む。それから倉持さんは周りに置かれていた雑貨品を手で払い除けたり、持ち上げて床に叩きつけたりした。彼女の目はどこか悲しそうだった。
悲しげに暴れる倉持さんを私は見つめた。向こうは私の視線には気づかない様子だった。一方で友美も倒れ込んだままそれを目にしていた。それから彼女は急に泣き出して、玄関を飛び出していった。
「待って!」
私は声をかけた。それでもこの声が倉持さんに届くことはなかった。
程なくして友美が起き上がった。
「友美……」
「なに?」
彼女のその言葉には怒りや苛立ちの思いが含まれていた。
「ううん。何でもない……」
私にはそれ以上言うことができなかった。
友美は辺りを見回す。私もそれにつられて周りを見た。倉持さんが散らかした物が散乱している。それはまるで、友美と倉持さんの関係性を示しているように思えた。すると、彼女は私にこう告げた。
「今日のパーティーはおしまい。帰って」
その言葉には棘が含まれていた。
「待ってよ」
「いいから、帰って!」
そう言って彼女はみんながいる方へと一人で向かっていった。彼女の背中には孤独が付き纏っているように見えた。
一人になった私はその場に座り込んだ。それから一息、深呼吸をした。
「なんで、こんなグチャグチャなんだろう……」
顔を上げて何も無い天井に向かって呟いてみる。もちろん、何も答えは返ってこなかった。
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