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家で私が買ったチキンを食べていると、またしてもお母さんが「何かあったでしょ」と聞いてきた。「なにも、ないよ……」と私が返すと、心配そうな顔で話をやめた。そこまでは、いいのだが、私にとって意外だったのは、この後、お父さんがいつも以上に早く帰ってきたのである。
「ただいま」
疲れ切った調子でそう言ったお父さんを見て、私は驚いた。
「ねえ、どうしたの? いつもより早く帰ってきちゃって……」
「あ、ええとな、今日はクリスマスだし、せめて今日くらいは早く帰ろうかと思ってな。あ、あとこれだ。これを由香里に渡したかったんだ」
弱々しい声と共にお父さんは小包を差し出した。
「何これ?」
「クリスマスプレゼント」
私は、どうにも苦しい気持ちになって、それを受け取るなりすぐに部屋へと直行した。
「おい、由香里?」
「由香里?」
お母さんとお父さんの声が聞こえたが、それに答える気にもなれず、自分の部屋のドアを閉じた。いつのまにか息が苦しくなっていたが、この時の私はこうすることを選んだのだ。
プレゼントを傍に置いて、ベットの上に飛び込む。気持ちはぐちゃぐちゃ。かと言って、気持ちを落ち着ける手段はない。
「どうして、こうなるかな…… 」
自分の中に在るピラミッドが崩れはじめている。
みんなが必死に立てたピラミッドは、いずれ意味が無くなって取り崩されてゆくのだろうけど、私の中のそれは倉持さんという突如現れた存在に壊されようとしている。一方で、私自身は、変われずにいる。さっき、二人が喧嘩をした時、止めに入れていたらよかったのにと、この時思った。気がつくと眠りについていた。
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