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バスケットボールの試合、第三クォーターが残り1分に差し掛かり、私は意地を見せた。チームメイトの真希ちゃんからボールを貰って、相手のゴールへと進む。相手チームの防御をかわしてゴールへ近づき高く飛んだ。ボールは見事にゴールへと入り、地面に目掛けて落ちていく。着地した私の髪が少し揺れた。私の周りで歓声と拍手が起こる。それは体育館中に響く。観戦に来ていた何人かの引退した先輩たちが「よっ! 期待のエース!」なんて言って私のことを囃し立てていた。直後、休憩時間となった。第四クォーターを経て、最終的に試合は私たちのチームが勝利した。私たち一年生にとっての初陣であり、最初の勝利であった。
「今日は祝勝だ! えいえい」
昼下がり。学校からの帰り道。同じチームの石崎友美が勝鬨を挙げる。私たちはそれに応えて手を掲げて「おー!」と一斉に言った。友美は私たちのリーダー的な人だった。彼女は普段からさまざまな場面で私たちを取り仕切っていた。友美の横顔を見つめる。私は友美の顔立ちは──私の基準ではあるが──そこそこに整っていて、それと共にこの‘世界’を立ち回るのが上手な人だと思っていた。
「それで、どこで祝うの?」
仲間の真希ちゃんの素朴な疑問に全員がはっとした。私たちは慌てて祝勝会の会場を探した。宴の場所は二十分かけて探した末に安いファミリーレストランで開くことになった。私たちは高校生であるが故に十分なお金を持ち合わせていなかった。だから、普段はなるべく注文をしないようにしていたが、今日ばかりはお金遣いが荒くなった。
「すみません! ナポリタンください!」
「すみません! ティラミスください!」
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