陽射し

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陽射し

私は今までの経緯を南に説明した。 「えーっ!13才なんですか⁈13才でその太々しさ?」 「うるせーよ!生きてくためには図太くならなきゃいけなかったんだよ‼」  話をすると南は良い奴だった。学校にも行っていない世間からはみ出し者の私を偏見の目では見なかった。  そして婆さんがいなくなって大騒ぎになっているであろう老人ホームにも連絡はしないでくれていた。 「それでこれからどうするんですか?」 「とりあえず婆さんが行きたがってる札幌に行ってみるよ」 「貴女がそこまでする理由は何もありませんよね⁈」 「なんかなぁ…ほっとけねぇんだよ」  南は一瞬、ハッとした表情を見せたが少しだけ押し黙った。  そして僅かな沈黙の後に、にっこりと笑う。 「雑な言葉遣いと真逆で良い人なんですね!考え方も大人びてるし!」 「うるせぇ!ほっとけ!」  南は年の若い私をからかっていた。言葉を発する表情の隅々に悪戯な笑顔を覗かせていた。  でも私は気にしてはいなかった。南の人柄は充分に把握していた。  そして南は自分の知ってる婆さんの事を語った。  婆さんが老人ホームに入ったのは3年前の事だった。  旦那に先立たれて一人身になり自ら老人ホームに入る事を選択していた。  3年間、仲間も作らずいつも独りぼっちで過ごしていた。  家族もいないので誰も面会にも来ることも無くいつも遠くを見ながら黄昏ていた。  毎日をぼんやりと過ごし、その様子は幸せとは程遠かった。  生き甲斐のない毎日に婆さんは何を希望にしていたのだろうか?  ただ、私には気になる事が一つだけあった。  婆さんに家族の存在を尋ねた時、息子がいると言っていた。  あれは婆さんの記憶の改変なのだろうか? 「ホームに来る以前の事は詳しく知りません。桐島のお婆ちゃんは自分の事を余り話しませんでした」 「南…この婆さんの事は暫く私に預けちゃくれないかい?」 「わかりました。貴女にだったら任せていいでしょう。極道の妻みたいな貫禄あるし…」 「誰が極道の妻だ‼黙れ‼」 「あはははははは…」  南が良い奴で良かったと私は心の底から思っていた。  しかし南は私に任せておけば安心と言わんばかりに急にバカンスモードに変身する。  私たちの席に身を寄せて散々、飲み食いした後は酔っ払いながら青森で降りていった。
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