何見てるのよ!

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何見てるのよ!

 帰りの電車でバッタリ彼女と鉢合わせた。  彼女は口には出さなかったが「あっ!」といいそうな顔を浮かべた。  バツが悪そうに私の事をチラチラみている。  しかしお互いに車両を変える訳でもなく乗り合わせていた。  電車の中で彼女の様子を観察していたが初対面での高飛車な態度は見られなかった。  それどころか居た堪れなさそうなモジモジした様子は可愛らしさも伺えた。  やはり私と同じ年代の少女だと思った。  しかし私が観察している事を察すると彼女の態度は豹変する。 「ちょっと!何見てるのよ!キャラが被ったのを嘲笑ってるの?」  この娘にとってキャラ被りはどれだけ重い罪なのだろうか?  キャラが被ると親に捨てられたりするんだろうか?  そんなにキャラに拘る理由が私には理解できなかった。 「い、いや…さっきと違って可愛らしかったから、つい…」 「えっ…?何を言ってるの…?」  私の言葉に頬を赤く染める。あまり褒められた事が無いのだろうか?  やはりこの娘はどこか可愛い。ここだという明確な理由はないがどことなく様子が可愛いのだ。  どうして高飛車な態度で高圧的に絡んできたのだろう。  少し話してみたが今はそんな様子は一つも無い。  私はこの娘が同じ駅で降りる事を知ってカフェに誘った。  駅前のカフェは彼女も常連の様だった。 「ここのチーズケーキは美味しいわよ!」  言葉とは裏腹に彼女の態度はお勧めしている感じではなかった。  構えた様子で笑顔を全く見せない。それは表情が崩れる事は殆どなく鉄仮面の様だった。  少しだけわかったのは予想外の出来事でもなければその鉄仮面は崩さない。  つまりこれが彼女の通常の顔という訳だ。  彼女は損をしている生き方に気付いてないのだろうか?  私は彼女について色々聞いてみた。名前はめぐみと言った。  私と違いお嬢様学校に通っている17歳だった。  近所に住んでるようだが学区が違う為、面識は無いようだ。 「じゃあ、めぐみのお勧めを頂くわ」 「め、めぐみって…なんですのいきなり馴れ馴れしい…別に良いですけど…」  めぐみは嫌そうな感じではなかった。口を尖らせてはいるが耳まで真っ赤にしている。  名前で呼ばれることが余りないのだろうか?  私は鉄仮面から不意に覗かせる慌てた顔とのギャップが可愛くて堪らなかった。 「ねえ、連絡先交換しましょう」 「えっ!れ、連絡先…⁈」 「お友達になりましょうよ!」  めぐみはお友達という言葉にしばし固まってしまった。ケーキを口に頬張る直前でボケーっとしている。 「お、お友達…ね…は、はい…」  そして私たちは連絡先を交換した。よく見るとめぐみの体が細かくプルプル震えているのを私は見逃さなかった。
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