それは勘違いよ!

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それは勘違いよ!

 私は気分転換のつもりでめぐみを映画館に連れて来ていた。  めぐみは映画館に余りきたことが無いのか周りをキョロキョロし、少しワクワクした様子も見せている。  いったい普段どんな暮らしをしているのかと心配になっていた。  映画が始まるとめぐみは固唾をのんで見守っていた。  そして映画の進行に合わせてたくさんの表情を浮かべていく。  笑ったり、泣いたり、驚いたり、普段は決して見せない顔を覗かせる。  めぐみの鉄仮面は自分を守る最高のアイテムなのだろう。  しかし同時に人を遠ざけ敵を作っているものだと自覚しているのだろうか?  心をすり減らしている事を感じているのだろうか?  めぐみが鉄仮面を使い始めた理由はわからない。  抜き差しならない理由があったのかも知れない。  どんな理由であれ、ありのままの自分を見せない事は相当の精神力を使う。  ガチガチに固められた心は、いつか崩壊してしまうだろう。  私はそんなめぐみの心に安らぎを与えたかった。 「楽しかったわ…」  めぐみの鉄仮面は復活を遂げる。 「良かった~」  そう言って私が微笑むとめぐみの顔から力みが消えた。 「ありがとう…」  そんな感謝を口にするめぐみに私の前ではありのままの姿でいて欲しいと願っていた。  そしてあれから数日が経った。  通学路でめぐみの姿を見る事は無くなっていた。  心配はしていたが電話で連絡する程の事は無いだろうと考えていた。  めぐみも私の連絡先は知っている。何か困った事があれば連絡してくると考えていた。  そんな時、リボンの学級委員長の姿を見かけた。 「あっ…こんにちわ」 「あら…貴女…」  リボンの学級委員長は私の姿を見ても特に変わった様子も無くぼんやりしている。 「最近、めぐみを見かけませんが何かありましたか?」 「めぐみさんならずっと学校を休んでらっしゃるわよ」 「えっ⁈どうしたんですか?」 「さあ、詳しい事はわからないですわ」  委員長はめぐみに無関心だった。同じクラスメイトでも手の掛かる人間には深く関わらないのだろうか? 「それより…身勝手なめぐみさんにも友達がいらっしゃいましたのね」  鼻でクスッとと笑われた気がした。めぐみの事を馬鹿にしている感じが滅茶苦茶、腹立たしかった。 「それは勘違いです!めぐみは身勝手なんかじゃありません!」  私は珍しくエキサイトしていた。おっとり系の私が怒る姿は委員長にどう映ったのだろう? 「まあ…そうでしたのね…それではこれで」  委員長は少し驚いたようにも見えたが冷静を装いその場を去った。  私は直ぐにめぐみに連絡を入れた。めぐみは具合が悪くて寝込んでると言った。 「住んでるとこの住所、言いなさいよ‼」  今日は何て腹の立つ日だろう。めぐみの家に向かう私の顔には鬼気迫るものがあったに違いない。
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