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ごめんなさい!
めぐみの家は高層マンションの上層階にあった。しかし今の怒り狂った私には感心するゆとりも無かった。
ドアを開けるとパジャマ姿で活気のないめぐみが出迎える。
その姿には生気が無く目の下にはクマを作らせていた。
「いらっしゃい…こんな格好で失礼するわ…」
「病気なら連絡入れてよね‼心配するじゃない‼」
いつもの2人の様子とは立場が逆転していた。めぐみは私の勢いに圧倒されていた。
「ううっ…ごめんなさい…」
言葉にならないような低い声でポツリと呟く。
本当に申し訳ないと言った面持ちで伏目勝ちで私を見ている。
沸騰状態から我に返った私はある事に気が付く。
めぐみは病気でありながら何故か1人で過ごしていた。
お母さんは仕事に出ているのだろうか?
「看病してくれる人は家に残ってないの?」
「私は一人暮らしでしてよ!」
「何そんなことで啖呵を切ってるのよ…それなら尚更、早く連絡よこしなしよね⁈」
「ううっ…」
一人暮らしだと言って啖呵を切るめぐみに私は呆れていた。強く𠮟りつけると子犬の様に申し訳なさそうにする。
「まず、食べたいものを言いなさい!足りないものと一緒に買ってくるから‼」
「リ、リンゴ…」
「リンゴね⁈水枕も無いみたいだから買ってくるわ…待ってなさい!」
「は、はい…」
私はめぐみを子供を扱う様に寝かしつけた。
買い物から帰って見るとめぐみは大人しく寝ていた。
「ただいま、買ってきたわよ」
しかし私の姿を見ると起き始めようとする。
「今からごはん作るからちゃんと寝てなさい」
水枕を準備してめぐみを寝かしつけると私はお粥を作る準備に取り掛かった。
私の家は裕福ではない。母がいないときは私が食事を準備する事だってある。
料理は手慣れたものだった。
「台所、借りるわよ」
「うん…」
めぐみは妙に素直だった。病気で心細かったのもあるだろうが、それだけとも思えない。ペットの犬の様な従順さがあった。
めぐみの家のキッチンは使われていないかの様に奇麗だった。
ゴミ箱を確認するとカップラーメンの容器が大量に捨てられている。
具合が悪いのにこんな食生活を送っていた事に私は憤りを感じた。
一人暮らしの生活ならば仕方がないとも思えるが、親は心配では無いのだろうか?
鉄仮面の秘密は生い立ちに関係しているのかも知れない。
「できたわよ~お粥だから食べやすいわよ。食べたいって言ってたリンゴの皮も剥いたからね」
めぐみは準備された食事に目を見開いていた。暫く呆然と見つめていた。
「あ、ありがとう…うぐっ…うぐっ…」
そう言いながらボロボロと泣き始める。くしゃくしゃな瞳から大粒の涙が溢れていた。
「こらこら…なに泣いてるの?余計具合が悪くなるわよ」
「だって…こんなに優しく…うぐっ…うぐっ…」
めぐみはこんな事をされた事は無いと言いたげだった。
「友達じゃん!」
「う、うん…ありがとう…うぐっ…うぐっ…」
「よし、よ~し…」
いつまでも泣き続けるめぐみを私はそっと抱きしめた。
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