素直におなりなさい!

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素直におなりなさい!

 衝撃的なめぐみの告白に私は驚いていた。この続きは聞いて良い話なのかもわからなかった。  私を見つめるその顔は悲しげでありながら微笑んでいる。  複雑な家庭環境があったとして、私はどんな対応を取るべきなのかと悩んでいた。 「驚きまして?小2の頃に母を亡くしているの」  めぐみは自ら語った。その姿は夕暮の淡い光に包まれていた。  語られる真実に私は言葉を無くしていた。  物心が付いた頃にはめぐみの家庭は既に崩壊していた。裕福でありながらその内情は氷の様に冷え切っていた。  家庭に寄り付かない父親と自分の子供に愛情を抱けない母親。  父親は他で作った女に溺れ、母親はその寂しさからか酒に溺れていた。めぐみはそんな両親の元で育っていく。  めぐみには両親の愛情というものが何だかわからない。使用人任せで両親から目を向けられないめぐみに知る術など無かった。  放任されて独りぼっちを余儀なくされためぐみは感情を表す事は無くなっていった。  そして冷え切った夫婦関係に疲れたのかめぐみの母は自ら命を絶つ。詳しい真相はわからなかったが、ぶら下がった母親を発見しても涙は流れなかった。  目の前の現実に実感が湧かなかったのか、母親という思いがどこからも湧かなかったのか?  幼いめぐみはぼんやりとその光景を眺めていた。 『仮面の家族』私の頭にはそんな言葉が浮かんでいた。  めぐみの鉄仮面もそこから始まっているのではないだろうか?  語っていためぐみの顔はいつしか感情のない鉄仮面に変わっていた。  悲しい真実を口にしながらそこには何の感情も見られなかった。 「辛かったねー‼」  私は思わずそんなめぐみを思い切り抱きしめた。  そして抱きしめながらわんわん泣いた。  どうして貴女が泣くのと言いたげに呆然とするめぐみ。 「もう我慢しなくて良いんだよー‼」  私の言葉にダムが決壊したようにめぐみの涙は溢れ出した。
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