それを寄こしなさい!

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それを寄こしなさい!

 落ち着きを取り戻した私たちは遊園地のベンチでお互いの事を語り合っていた。  私は平凡な家庭で平凡に暮らしているが、めぐみにはそれが新鮮なのか食い入るように聞き入っていた。  憧れを抱くような眼差しで私を見つめる。単純な一般家庭の生い立ちがめぐみには輝いて届いているのだろうか?  めぐみの父親は既に別の女性と家庭を築いていた。邪魔になっためぐみは一人での生活を余儀なくされた。生活に困らないだけの生活費は毎月貰っているが、父親が訪ねてくることなど一度も無かった。  病気で具合が悪くなったとしてもそれは同じことだった。  父親には既にめぐみに対する愛情などは無かったのだ。  愛情に恵まれずに育っためぐみには人に対しての接し方がわからない。  そこには他人に対しての怖さもあったのかも知れない。  どんなふうに接して良いのかわからないから誤解される様な対応になってしまう。  初めて会った人間にはめぐみの生い立ちなど全くわからない。誤解を招く対応を良く思う人などいない。  めぐみは常に孤独の中に居た。人に傷つけられない様に仮面を纏って。 「めぐみ…それ私のと交換しよう」  私はツインテールを束ねる片方のゴムをめぐみに差し出した。  そしてめぐみのツインテールを束ねる片方のゴムと交換する。 「これはね。いつまでも一緒の証」 「うん…」  私に見せるめぐみの顔は表情豊かで鉄仮面など見えない。  それは私には心を開いてくれてる証だと信じている。  二人の絆がいつまでも固く結ばれている事を私は強く信じていた。                END
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