待宵草 二

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「おい?」  ムカデの死体と飛散した体液を放っておいて、一体どこへ行くのかと詰問したかったのだが。  呼びかけにふり返った朔を見て、高橋は言葉を失った。    白い肌に真紅の花びらが張りついたかのようだった。    息を飲み、思わず見とれてしまう。  高橋が呼びとめたものの何も言わないので、朔は作業票を社長に渡すため、さっさと店へと入ってしまった。  朔が歩き去った後には、ムカデの登場で高橋に取り落とされたプレゼントが、無惨にも踏み(にじ)られていた。
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