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埃とグリスで汚れた作業着を脱ぎ、朔が子供の時からここにある洗濯機に無造作に突っ込んだ。
浴室に入ると、シャワーの水栓をひねった。湯気を立てて、温水は粒子となって朔を打つ。
朔は鏡のくもりを拭った。
もう一人の朔がこちらを見つめ返してくる。
細かい水粒を集めて滴を作り、それらを鼻筋や頬にたらす前髪の間から、こちらをのぞき込む双眸を確かめた。
瞳の色はまつ毛が落とす長い影にも翳ることなく、どこまでも透きとおる。静謐で清浄な光をたたえた双眸は、薄茶色をしている。
いつもの色に戻っていると、朔は思った。
*
いつのまにか月は雲の陰に隠れ、部屋は闇に支配された。
膝を抱え、壁にもたれる奏凪はまどろむ。
その足元で、色あせた畳の上で毛布一枚にくるまり、朔が眠る。
奏凪はふと目を覚ます。
朔がいることを確認してから、再び目を閉じる。
さっき朔にふれられたところが熱かった——
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