春を投げる

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           ☆     3年前。4月。   中学までバレーボールをやっていた私は、高校では陸上に転向しようと心に決めていた。団体競技がどうも苦手だったから、今度は一人でできる競技を選ぼうと思ったのだ。   陸上部に入部して1週間が経った、金曜日のことだった。グラウンドの隅の桜の木の下で、私は三年の先輩と一緒に砲丸投げの基礎練習をしていた。 「おーい、ちょっと」 後ろから聞こえた声に私が振り向くと、長身の男子が私を見ていた。それが圭吾だった。圭吾は一歩、また一歩と私に近づいてくる。男子に免疫のない私は、緊張のあまり目をぎゅっと閉じてしまった。 「ほれ。頭に花びらが乗っかってたよ」 その声に私がおそるおそる目を開くと、右手の指で桜の花びらを摘まんだ圭吾が、にひひと笑っていた。 「あ、ありがとう」 突然のことに私が慌てふためいていると、圭吾の顔がさらに急接近して、唇と唇がぶつかりそうになった。あっけにとられた私に、圭吾は笑いながら言った。 「お前初音って言うんだろ? 頑張れよ、砲丸投げ」
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