春を投げる

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それから私たちは部活で少しずつ話をするようになった。圭吾はお調子者で、よく私にちょっかいをかけてきた。それまで男子とまともに話したことがなかった私だったけど、しだいに圭吾と気軽に話せるようになった。 圭吾は他の男子と違って優しい人だ。そう思っていた私はお気楽だった。圭吾が他の女子にも分け隔てなく話しかける姿を見て、圭吾の優しさは自分だけに向けられたものではないと私は思い知った。勘違いしちゃだめだと、私は何度も自分自身に言い聞かせた。 けれどあれから3年が経っても、私は圭吾を何度も目で追っては傷ついてを繰り返している。そんな臆病な自分が大嫌いで、だから私は思い切って圭吾に告白しようと決めた。 決行日は六月の関東大会。私の高校生活最後の大会だ。
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