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山岸静佳 享年61歳
見つかった癌はあっという間に私の身体を蝕み、絶え間ない痛みがここ最近の友達だ。
私達夫婦はよく旅行へ行った。
早めに仕事をリタイアしてこれからもっと行こうねって言ってたとこだった。
国内はもちろん、海外もたくさん行った。
国内は多分行ってない地域はないんじゃないかな?
海外は…ハワイ、中国、メキシコ、カナダ、スペイン、南アフリカ、イタリア…。
あとは、ガラパゴス諸島へ行きたいと夫婦で言っていたけど、私の病気が見つかって、ついに叶わなかった。
私は疲れやすく、移動も負担になっていた。
それでも、もう一度旅行に行こうと彼が言った。
一度言ったら猪突猛進。私があやふやな返事をしているうちに、綿密な計画を立てていた。
私のためにできることを必死に探していた彼。
何かしていないと
何か考えていないと不安なんだよね。
あなた一人残されてしまうんだもの。
二人がお爺さんとお婆さんになったらまた来たいねと言っていた、日光への旅行計画。
彼のことだから私の病気の急変に備えて道中の病院まで調べ尽くしてるんだろう。
国内の旅行は本州なら必ず彼の運転で行く。
車内で聴くプレイリストは彼によって用意された、私のための音楽達。
「しーちゃんが好きそう」
「これ前に聞いてたでしょ?」
たった一度聴いてみただけみたいな曲も覚えていてちゃんとプレイリストに入ってる。
一度聴いただけの曲も、私が好きそうと言う曲も、実際はそこまで好きじゃなかったり、彼の好みのような気もするけど黙って聴いていた。
寝る間も惜しんでCDを作っていたのを知っていたから。
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