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店主は少年の目の前に膝をつき、腹に向かって手を伸ばした。
「!!」
肉をつかまれるような感触があり、目を瞑る。すぐに薄く目を開けると、店主の手が腹の中に吸い込まれていく。
自分の中にどす黒く蠢くものがあった。芋虫のようにうねり、腹の中を食いちぎっている。店主はそれを掴んだ。耳をつんざくような咆哮が部屋中に響く。店主は自分の手首を掴み、腹から引き抜いていく。抵抗にあい肘まで呑まれそうになったが、力づくで腕を引いた。
少年は目を見張り店主を見ていた。終始涼しい表情だ。
グチグチと音がする。勢をつけ腕が抜かれた。
店主は黒くうねるものを天井に向かい放り投げる。
背後に手をまわし大鎌が振り上げられた。白い光が一閃した。
真っ二つになった黒い虫が煙を上げ蠢きながら天井から落ちてきた。
疾風が吹き、何処から飛来したのか、部屋を覆うほどの大きなカラスが羽を広げはためく。
黒い虫をくちばしに挟み、少年の前を横切った。
旋回を見上げていると、突如視界が真っ黒い羽の闇に覆われた。
それきり、少年はぱたりと畳に倒れ伏した。
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