くまさんは何処

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 少年の陰から少女が怖々と見上げる。  店主は大仰な身振りで店の中を見回した。 「見てご覧。くまさんみたいなふわふわなもの、ここには見当たらないよ」  両壁に立つ棚には骨董というよりがらくたと呼んだ方が良さそうな品々が並んでいる。いびつな皿に、出自も定かでなさそうな茶碗。文字も見えぬほど黄ばみ傷んだ掛け軸。どうして運び入れたものかわからないほど大きな壺は底が欠けている。その隣には南洋のものと思しき人形が座り、何くわぬ表情で明後日の方を見ていた。  押し黙った少年を見て店主は然もありなんと胸を張ったが、棚の天辺にあるふさふさとした毛のいびつな丸い塊に目を留め、しまったという表情をした。  少年がぱっと駆け出した。 「リミちゃん、あの奥だ!」 「まって」  あっという間に店主の横を通り過ぎ、靴を脱ぎ捨てて奥へ上がり込む。少女も追いかけた。暖簾の下をすべるようにくぐり、手を取り合って廊下を走り出す。  店主は彼らの足音が遠ざかるのを聞き、婆さんお茶ー、と呑気な声で呼んだ。
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