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少年は長い廊下のふすまを一つずつ開けていった。
廊下は長く、はじめこそ勢いがあったが徐々に腕が重くなった。
それでも少年は無心になってふすまを開け続けた。
だんだん、なぜこんなことをしているのかわからなくなる。
元はといえば──
そういう考えが浮かんだが、すぐに忘れまた次のふすまを開けた。
少女は少年の後ろをついてくる。心配そうに見る少女に少年はうなずき、またふすまを開けた。
どれくらい開いただろう。
部屋の中はどこも空だ。ふたりの探すものはおろか、家具も骨董も、なにひとつない。
ふと少女の肩に細長い何かが当たり、カランと聞き覚えのある音がした。教室でよく聞く音。
少女が辺りを見回す。
「きゃっ」
その何かを踏んづけ、危うく転びそうになった。
そこには一本の鉛筆が転がっていた。
少女はしゃがみ込み鉛筆を見る。
見たことのある青い柄。
「リミちゃん!」
少年に鋭く声をかけられはっとする。少年はすでに三つ先のふすまを開けたところだった。少女は慌てて少年のあとを追った。
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