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ずいぶんふすまを開けたが、くまさんは見つからない。
ただふすまで区切られた和室があるだけだ。どれだけ行っても同じ部屋しかなかった。
気がつくと自分たちが入ってきた入り口も見えず、先の突き当たりも見えない。
ふたりはおそろしく長い廊下のただ中に立っていた。始まりも終わりもない場所に迷い込んでしまったようだ。
「カズホくん……帰りたい」
少女が今にも泣きそうな表情で少年の袖を引っ張る。だがここまで来てしまったからには引き返すわけにはいかない。
「だめだよ、くまさんを見つけるまでは」
ふと、少し先に折れ曲がる回廊があるのが目に留まった。
「あっちに行ってみよう」
少年が少女の手を引いて駆け出す。
少女がカズホくん、と力なく呼ぶんだがもう耳に入らなかった。
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