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回廊に入った奥へ走り込むとすぐに突き当たりになりほっとした。
右手に開け放された広間がある。
見たこともないくらい広い和室だった。薄暗い部屋の中へ彼らは恐る恐る足を踏み入れた。
「いてっ」
広間の真ん中まで来たとき、少年は頭を押さえた。何か硬いものが当たったのだ。
少女が畳に落ちている四角い箱を取り上げた。
「これ、ペンケース。ユウタくんのに似てる。こないだ失くしたって言ってた」
また近くにパサリと落ちた音があった。
手製の手提げ袋はピンクの布地で縁取りにレースが施され、手の込んだ刺繍がしてある。
「ミカちゃんの! これも失くなったって泣いてたの」
「なんで……」
少年の問いを皮切りにバタバタと雨のように落ちてきた。
ミニカー、ゲーム機、着飾った人形、飾りのついたゴム、キャラクター柄のハンカチ、ノート、新しい運動靴、手編みらしいマフラーに手袋、お土産のキーホルダー、色とりどりのビー玉、本、ぬいぐるみ、化石の標本、小さなたくさんの貝殻。
足の踏み場もないほど埋め尽くされていく。
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