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唇が震えて、ちゃんと言葉に出来たか分からない。けれど、目の前の暁翔が嬉しそうな顔をしているのできっと伝わったのだろう。
「おれもです。おれもずっと、央樹さんの傍に居たい。一生、おれの頼りないコマンド、聞いて貰えますか?」
暁翔が微笑んで央樹の手を取る。央樹はそれに小さく笑った。
「なんだか、プロポーズみたいだな」
「え? あ、そうですね……おれ、ちゃんとしようと思ってたのに。ひ、央樹さん、ちょっと! ちょっとだけ、このまま待っててくれますか?」
暁翔は慌てて立ち上がると、部屋の隅に置いていた鞄から小さな紙袋を取り出した。そのまま央樹の目の前に戻ってくる。
「ホントは、もっとちゃんと夜景の見える公園とか、ちょっといいレストランとか、そういうところでしようと思ってたんですけど……おれと、一生一緒に居てください」
暁翔が袋の中から小さな箱を取り出す。その中身に央樹は、え、と驚いた。
「央樹さん、指細いから、華奢なデザイン探すの、結構苦労しました」
央樹の驚きなど構うことなく、暁翔が箱を開け、中に入っていたリングの一つを取り出す。
「え、え、ちょっ、結城……」
左手を取られ、薬指にするりとリングが収まる。金と銀の輪がクロスしたようなデザインのリングはぴったりのサイズだった。
「よかった。初めて、家に泊まってくれた日にこっそりサイズ調べたんです」
「初めてって……随分前じゃないか」
「はい。だって……おれは、初めから央樹さんが好きだったんですから」
本当に幸せそうな顔をする暁翔に、央樹の胸はきゅっと苦しくなった。幸せ過ぎて怖いなんて、これまで感じたことがない。だから、暁翔にも同じ感覚を味わってもらいたい。
「結城、手、出して」
「え?」
央樹は驚く暁翔の左手を取り、箱に入っていたもうひとつのリングを手に取った。
「これは、結城の分だろう? だったら、僕がはめるべきだ」
央樹は暁翔の薬指にリングをはめる。央樹の指に収まったものと同じデザインのリングだ。
「やばい……幸せ過ぎて、死ぬかもしれない」
暁翔が自分の指を見つめながら、ぽつりと呟く。央樹はそれにくすくすと笑った。
「やっぱり、僕にとって、結城は最高のパートナーだよ」
同じことを思ってくれた。それが嬉しかった。けれど暁翔は少し不満そうな顔をする。
「そこは、最高の恋人って言って欲しいです」
そう言う暁翔に央樹が手を伸ばす。その腕を少しだけ引いて央樹からキスをした。すぐに離れるようなキスだったが、プレイ以外で央樹からしたことはなかったので、暁翔は驚いて央樹を見つめていた。
「……どっちも、結城がいい。結城じゃなきゃ、要らない」
「……全部、貰ってください。おれも、大事にします」
暁翔が央樹を抱き寄せる。その温かな腕に包まれて、央樹はゆっくりと頷いた。
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