懐かない猫

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懐かない猫

同僚に、無理矢理マージャンに誘われて、気がつけば終電を逃してしまった俺は、仕方なくタクシー乗り場へ向かっていた。 「真夜中の路地裏を歩くのは気分のいいものじゃないな。タクシー乗り場までの近道だから、仕方なく通るが」 しかし、どうしてこうも殺伐としてるんだろうか。 昼の顔と夜中の顔が全然違うのが、容易に想像がつくのが路地裏なんだろう。 カタ…… ん?いま何か音がしたよな。 俺は脚を止めて、振り返った。 誰もいない。 まぁいい、早くタクシーに乗って帰ろう。 俺はまた歩き始めた。 カタン……カタ…… 俺は、もう一度脚を止めて、こう云った。 「幽霊、今はお前を相手にする暇などない。またにしてくれ」 歩き出そうとした時、俺は何気なく下に視線を落とした。         壁に立て掛けてある自転車、その陰に何かの気配がする。 暗くてよく見えない。 仕方なくゆっくり近づいてみた。 人だ。それもたぶん女性だろう、長い髪をしている。 自転車に隠れるように、小さくなって、しゃがみ込んでいた。 「おい、大丈夫か?酔って寝てるんじゃないだろうな」 「……」 「マジかよ。こんな場所で寝たりしたら危険だぞ。チンピラに絡まれたら、どうするんだ。起きろ」 その時だ。   ガッシャーン! その女はいきなり自転車を蹴った!
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