懐かない猫

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「美帆さん、生計は、生活はどうしてるの?お母さんが朝からお酒を飲んでいるのなら、仕事はしてないだろうし」 「お母さんの実家が、お金を振り込んでくれるみたい、ちゃんと話してもらえないけど」 「そうか。……俺は思うんだけど、美帆さんは、お母さんの実家で暮らすのは無理なのかな。お母さんは、アルコール依存症になっているみたいだから、専門の病院に入院した方がいいと思うんだけど」 「お母さん、入院したことがあるの。二回。でも退院すると、直ぐお酒を飲んでた。だから治らないと思う」 「そうか、あるのか……どうすれば一番いいのかなぁ」 すると彼女は云った。 「今のままでいいよ」 「だけど、このままだと美帆さんは、ずっと苦しむことになってしまうよ。いい案が見つかるといいんだが」 「本当に今のままでいいんだ」 「どうして?知らない男が家に来るなんて、美帆さんも嫌だろう?その……お母さんの暴力だって」 「ワタシが我慢すればいいだけだから」 俺は……言葉を失った。 こんな酷い目にあってもなお、彼女は母親の傍に居たいのか……。 どこのスケベジジイだ、彼女を『懐かない猫』などと呼んだのは。 彼女は懸命に、大人たちに近づき、寄り添おうとしているじゃないか! それなのに、大人はどうだ? 誰か一人でも、彼女を受け入れたのか? 『懐かない猫』なんかじゃない。 『懐かせてもらえない猫』なんだ、この美帆という子は。
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