10章〜未だに何も知らない〜

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10章〜未だに何も知らない〜

夏休み中 同じ部活で集まって 花火をすることが流行った 私は大会期間であるため そもそも休みの日や早く終わる日が ほとんどなかったので無縁だったが ある日の午後8時過ぎ 1件電話があった 表示されていたのは れん ただそれだけ 2年7組のれんは3人もいた為 誰だか分からないまま出た 「はい、どうしたの?」 「あっ、えっと、佐藤廉です 今大丈夫?」 「大丈夫だけど、ちょっと待って」 幼なじみの連ではなかったので 私は母親のいるリビングから離れ ベランダに出た 今日はやませの影響なのか 涼しくて快適だった 「お待たせ、どうしたの」 私は答えた 「好きなタイプって何?」 「え?急だね」 れんの後ろから笑い声といけー!という 声援が聞こえた 私はそこから野球部の罰ゲームで 女の子との電話だろうと予測をつけた 「罰ゲームなんだ、大変だね」 「ブラックジャックで負けてさ」 「それは災難だったね、 女の子と10分電話とかそんなとこ?」 「だいたいまあそんな感じ、あっ好きなタイプ 答えて欲しいんだけど」 「うーん....優しい人かな、あとは面白ければ」 「無難だね」 「答えたのに無難っていうな笑」 「あーー本当に本当にごめんて」 意外と世間話でも盛り上がり あっという間に10分を終えた その後もトランプやUNOで負けた 野球部の何人かから電話が止まらなかった いやいや、負けすぎだし 私も忙しいけどなんて思ったりして ただ電話のバイブが鳴り続けているのを 私のお母さんは見逃さなかったため 出ないという選択肢はなかった みんな、電話を切る直前 決まって同じ言葉を言う 「頼むから幼なじみ達には言わないでほしい」 某日、今度は仲良し1年7組男子から LINEのグループに招待された 少し話をしたあと グループトークが解散する 個人LINEから1本の動画が 送られてきた 「月が綺麗ですね」 その一言から始まった謎の動画 そして、グループトークを解散させた 犯人が映りこんだ 「私が女性を2人招待しました」 ただそれだけだった 私には意味不明であった しかし後日、2年7組の 吹奏楽部のタクト氏から 「たぶん幼なじみに言わない方がいいよ」 と言われた 実はもうこの時点から既に始まっていたそうだ 私が誰か男子とお話をしていると 幼なじみ達が見たことない顔をすると いつも優しい彼らが冷酷になる 瞬間があると 「俺の里歩なんだけど」 私は高校3年になるまで、 そして25歳になるとき 幼なじみから直接聞くまで 私は何も知らなかった
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