君はおしゃべり

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 子供が独立して、夫にも先立たれての一人暮らし。寂しくないのは昔から飼っているオカメインコのぴーすけが何かと話しかけてくれるからだ。  おはようやおやすみの挨拶以外にも、いつの間に覚えたのかいろんな言葉をしゃべる。夫が生きていた時は全くしゃべらなかったのに、人、いや鳥が変わったようだ。 「ゴハン、ゴハン。オイシイ? オイシイ」  今も自分の餌をついばみながらそう言っている。   「オカワリ」 「まだあるでしょ」  私がそう返すと少し無言になる。どう返すのかと待っていると歌い出した。聞き覚えのあるこれはよく流れているCMソングだ。誤魔化し方も覚え、本当に芸達者になった。  日中はケージの鍵を開け自由にさせているが、よく私の後ろをついてきてはおしゃべりをしていくから寂しがる暇もない。私の可愛い小さな息子だ。  ぴーすけがおしゃべりをする時の声は二通りある。一つは高めの声で、この時は私が教えた言葉やテレビの真似だ。 「カアチャン、クロウバッカ、カケチマッタ」  そしてもう一つは、少し低めの声で口が悪かった夫の真似。初めて聞いたときは驚いた。こんなこと私の前では一度だって言ってはくれなかったから。 「ダマッテツイテキテクレテ、カンシャシテイル」  しゃべらないと思って気を抜いて色々と話かけていたのだろう。ぴーすけが覚えてしまうほど何度も。死んだ後に知られるのはどんな気分だろうか。 「オマエハスグニ、オッチヌンジャネッゾ」 「ふふふっ、そうね。ぴーすけとまだまだ一緒にいたいし、お父さんをからかえそうなネタもまだありそうだし、そんなすぐには死ねないわね」  照れ隠しで付け加えられたような悪態に思わず笑みがもれる。ぴーすけの嘴の下を撫でると甘えた声を出した。  思い出したように小出しに出されるそれは、遅れて届いた恋文のようだ。もう恋も愛も通り過ぎてしまったと思っていた。  でも今は。  あの頃のような分かりやすい恋ではないけれど、私は同じ相手に、穏やかな二度目の恋に落ちている。
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