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…………………………。
「……?」
痛くない。重くない。それどころか、何の音も聞こえない。
絶対に避けられない速度で何かが降ってきたはずなのに、何も感じない。
恐る恐る両目を開けると、私は肩を竦めて縮こまったまま突っ立っていた。
咄嗟に俯いたのか、視界には制服のスカートと靴下にスニーカー、それから路地のアスファルト。その灰色の地面が、私の回りだけ黒っぽくなっている。それはまさに、さっき私が見た影だ。
訳もなくゆっくりと、コマ送りみたいに上を向く。亀のように首を竦めて上目に窺うと、さっきも見た巨大な塊が私の頭の少し上にあった。
「え…っ?」
全く動かない。止まっている。
コンクリートの塊のような分厚い何かからは、引きちぎられた太いコードみたいなものが伸びて、周りに小さい塊や砂の粒が散っている。
ーーーどういうこと?
そっと目線をずらしてみると、私の周りにいる人や物も全て止まっていた。
顔を逸らして目を覆うおばさん、小さな子どもを抱っこして背を向ける男の人、運転席からこっちを見てるトラックのおじさんーーー。
何度目を擦っても頭を叩いて見直しても、私以外の全部が止まっていた。
もれなく思考も止まりそうになる。
なんで?どういうこと?なにこれドッキリ?私一般人だし。意味わかんないし。
今わかるのは、私以外の全てが停止しているということだけだ。少なくとも、ここから見える範囲の全てが。
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