【 若菜博士 】

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【 若菜博士 】

 薄い水色のタオルケット1枚が、クシャクシャになってお腹の上に乗っかっている。白いTシャツに、紺色のチェック柄のボクサーパンツ姿に少し胸がドキドキしてしまう。  大学2年生になってもまだ身長が伸びているのか、5月の時に会ってからまた大きくなったように感じる。  ベージュ色のポーチからメジャーを取り出し、お兄ちゃんの頭の天辺から足先まで長さを測ってみる。  やっぱりそうだ。185センチもある。まだまだお兄ちゃんは成長過程のようだ。メモ帳にそれを記した。  次に、私の大好きなお兄ちゃんの匂いを確認する。 (くんくん……)  う~ん、やっぱりこのお兄ちゃんの香りは最高。この香りにずっと包まれていたい。  温かくてやさしいホットミルクのような香り。それもメモ帳へカキカキする。  今度は、お兄ちゃんの細くて長い指先をチェックする。  こんなしなやかな指先で、色々なところを触れられてみたい。妄想が爆発しそうだ。  昔、小さい頃やったお医者さんごっこを今したら、私は間違いなく興奮で失神してしまうだろう。  そして、いよいよお兄ちゃんの体を(また)いで四つん()いに向かい合い、顔を間近で観察する。  目を(つむ)り、口を少しポカンと開けてかわいい顔をして、幸せそうに寝ている。  お兄ちゃんとの顔の距離は、およそ15センチ程。  お兄ちゃんの息遣いも間近に感じる。でも、まだ起きない。  今日はおでこにしようか、お鼻にしようか、それとも……。  でもお口はさすがに気が引けるし、お互いの意思でしたい。  だから今日は、まずはおでこから。  いつもこの時がブルブルってしちゃう。  お兄ちゃんまでの距離10センチ。  5センチ。  3センチ。  1センチ。  そして……。 『チュッ♪』 「あん♪」  また若菜(わかな)の体中に汽車ポッポさんが走ってゆく。
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