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【 汽車ポッポ♪ 】
私のおでことお兄ちゃんのおでこが、くっついてキスをしちゃった。
いわゆる『おでこキッス♪』っていうやつだ。
顔が火照っちゃう。でも、嬉しいし、楽しい。
それでも、まだお兄ちゃんは起きない。
それなら、今度はお鼻とお鼻で『鼻キッス♪』。
『チュッ♪』
「あん♪」
まずい。感じ過ぎて今度はちょっと大きめな声が出ちゃった。
思わず口元を左手で塞ぐ。
(あれっ?)
それでもお兄ちゃんは気付かない。
今日は、どうしたんだろう。いつもはこの辺りで起きるのに、まだ寝てる。
起きないと次の段階に進まないといけなくなっちゃう。
次はお口。でも、ここは最後の砦。これ以上攻める訳にはいかない。
ふたりが起きている時に、気持ちを込めてして欲しいから。
でも、お兄ちゃんとはもう随分とキスをしていない。
あれは私がコロナに感染して退院してきた時以来だから、もう4か月くらい前の話。それ以来、お兄ちゃんはキスをしてくれない。
お兄ちゃんのシュッとしたかっこいい唇は、今、私の目の前にある。
(お兄ちゃんとキスしたい……)
そんな欲望が芽生え始めた。私の中にいる悪い若菜ちゃんが顔を出して誘惑する。
「今がチャンスだ」と。
私は瞳を閉じて、顔を斜めに傾けた。
ゆっくりと顔を近づける。距離5センチ。
3センチ。
2センチ。
1センチ……。
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