【 悪菜ちゃん② 】

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【 悪菜ちゃん② 】

 お兄ちゃんは、状況を全く飲み込めていない様子。 「わ、若菜……? ご、ごめん。お、俺、お前に何かした……?」  寝起きでどうやらパニック状態になっているみたい。  私はわざと来ているワンピースを整えるように胸元を隠して、ベッドの上で(うつむ)きながらこう言った。 「あっ、別にいいんだよ。私、お兄ちゃんのためなら何だってするから……」 「あ、えっ? ご、ごめん若菜。本当にごめん。俺、全然覚えてなくて……」  お兄ちゃんはベッドの上の私に土下座をしている。  その様子を見て、ちょいとお兄ちゃんをからかってみる。 「大丈夫だよ、お兄ちゃん。若菜、お兄ちゃんの赤ちゃん欲しいし……」  恥ずかしそうに指を(くわ)えながら、反対の手でスカートの端を伸ばした。 「あ、あ、赤ちゃん……?」  お兄ちゃんの口が大きく開き、顎が一段と伸びて、床にそのまま落っこちそうだ。 「い、いつから居たんだ……?」 「んっ? 内緒」 「内緒?」 「うん……」  その言葉に、お兄ちゃんが少しずつ冷静に物事を判断できるようになってきた。  私がパジャマ姿ではなく、外行きの白いワンピースを着ていること。玄関の方へ目をやると、ピンクのキャリーケースがそのままの状態で置いてあること。  再び私の顔を見て、ようやく気付き、胡坐(あぐら)をかいて頭の後ろの方をボリボリと()き始めた。
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