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【 ナイトプール? 】
「そう、夜にやっているプールのこと」
「ナイトプールなんか行かないよ」
「もう、お兄ちゃんとふたり分のチケットも買ってあるし、貸しエアチェアセットも予約してあるんだよ」
「はぁ? チケット買っちゃったのか!? また、親父に頼んだのか?」
「うん」
「うん、じゃない。はぁ~」
お兄ちゃんは両手で頭を抱えながら、すっかり呆れている。
お兄ちゃんのご機嫌が直るように、朝食のハムエッグを作ってあげた。
肩を揉んであげて、足裏マッサージをしてあげて、耳掃除のコチョコチョもしてあげた。
するとようやく、お兄ちゃんの口からお許しが出た。
「しょうがねぇなぁ。いつだ?」
「明日の日曜日の夜。お兄ちゃんの実習がないお休みで、花火もやっている日」
「そこまで用意周到なら、今回だけは付き合ってやる」
「ありがとう、お兄ちゃん……」
その時、突然、涙が溢れてきちゃった。
なぜだろう……。
膝の上に横向きに寝ているお兄ちゃんの頬に零れた涙がポツリと落ちた。
「鼻水、落ちてきたぞ」
「ごめんね、お兄ちゃん……」
左手で自分の涙をさっと拭うと、お兄ちゃんの頬に落ちた涙も震える親指で3回やさしく拭った。
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