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【 プロローグ 】
目を開けると、空から王子様が落ちてきた。
初めは太陽の黒点が落ちてきたのかと思ったけど、それは徐々に大きくなって行って、やがて私が仰向けに大の字になっている左横に落ちてきた。
ドスンという音と振動が、鮮やかな黄緑色に輝くフカフカの絨毯のような芝生から、私の心と体を震わせる。
まるで夢を見ているみたい。
それとも、私はもう死んでいるのかな?
なぜこんな所に寝転がっているんだろう?
ゆっくりと瞼を一度閉じると、自然に涙が零れ、両頬を伝う。
昔、いつも嗅いでいた香り。懐かしい香り。
その王子様は、私を激しく抱きしめると、こう言った。
「2階の屋上が芝生じゃなかったら、お前死んでるところだぞ! ばかやろう!」
(えっ?)
その人は私の焦げ茶色の髪を右手でクシャクシャとすると、その大きな胸に私の体を深く包み込んだ。
「キャーーッ!」
そして、なぜかもう一人、空から赤い服を着た長い黒髪の美女も落ちてくる。
5月の少し暖かくなった風が、私の小刻みに震えている髪を大きく数回揺らした。
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