筋肉泥棒

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トレーナーのグリコ先生(仮名)は、まだ若々しいイケメン20代の男性。 打ち合わせのため初めて彼と会った夜。 まず、日本人離れした彫りの深い整った顔立ちに目が釘付けになり、同時に彼の筋肉の美しさに圧倒された。 無駄にゴツくない引き締まった筋肉。 どんな服装でもスマートに着こなせるであろう磨き抜かれた細マッチョ。 ああ、まさに、俺が欲しいのは、この筋肉。 瞬間的に、彼の筋肉をと思った。 『筋肉泥棒』 そんな言葉が脳裏に浮かぶ。 普通に考えたら筋肉を盗み取ることなどできる訳がない。 それでも、きっと、この筋肉を盗み取ってみせる。 この美しい筋肉を完璧に盗み取ることを、目標に掲げよう。 『筋肉泥棒万歳』 腹の底で、そんなことを考えながら、俺は半ば放心したように無遠慮に彼の体をジロジロ見つめ回した。 グリコ先生は少しも怯む様子はなく 「お会いできて光栄です。筋トレのサポートをさせていただきますグリコです」 と、長い濃いまつ毛を蓄えたクリクリした大きな瞳で真っ直ぐに俺を見て堂々と挨拶した。 蜘蛛のような、か細い手足の俺を見て 『コレはやり甲斐があるぞ!』 と期待したかもしれない。
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