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 そうしてさらに篠原陸翔はありえない要求をしだした。 「あなたが潔白であるか、証明してみせなさい」 「え。それって病院で証明書をもらってくるってことですか?」 「そんなことしなくても、見れば分かるでしょう」 「み、見て分かるものなんですか」 はあ、そりゃすごい。そんなものなんだ。 「下着を取って足を開いてください」 「い、嫌なんですけど」 「やっぱり、処女じゃないんですね」 「なっ、言いがかりです! 処女ですよ! 決まってるでしょう? わたし、こんなですよ? 彼氏だってできたことはありません。まっさら、新品です!」 「……じゃあ、できますよね? 子どもを作ろうって言ってるんです、見せるくらいどうってことないはずです」 もう、なんでこんなにしつこいのよ。 くらいついてくる篠原陸翔にため息しか出ない。どうせ、この先避けては通れないのだから見せるしかない。疑われたままでは何かと面倒だ。 私は覚悟を決めてパジャマのズボンを脱いで、間髪入れずにパンツも脱いだ。 勢いよくしないと、とてもじゃないけれどやってられない。 ちなみに今日は白いパンツの白パンである。  そろそろと足を開く。ベッドの上に座った私の前にきた篠原陸翔はずずいっと私の足の間に割り入ってきた。 ああ、いたたまれない。 「夫婦ですから恥ずかしがる必要はありません。……あなたはこんな場所まで白いのですね。それに毛が薄い……」  なんたる屈辱……。しかも実況しやがる。 「か、感想は結構です! お調べになるなら早くしてください!」 「……恥じらいなく、すぐに足を開くのも怪しい」 「なっ」  なに言ってんの? 馬鹿なの? 自分が開けって言ったくせに、ほんと、もう、無理!  なんでこんなことしなきゃなんないのよ! ムッとして足を閉じてやろうかと思ったが、太ももで篠原陸翔の顔を挟むのが、とてつもなくいやらしく思ってしまってできなかった。  フニ、と篠原陸翔の指が私の秘所を押した。そして両手で左右に広げると興味深そうに眺めている。 「ひ、広げないでっ」 「広げないと中が見えませんから……ここはピンクなんですね。こんなに綺麗なものなのか……」  なにを言っているのかわからないが、心なしか篠原陸翔の息が荒いような気がする。だって、当たる息が生暖かくて……。 「も、もう、いいでしょう? 確認できましたか?」  どうしてこんなことになっているのか……泣きたい。 「いや……これではわかりませんから。指を入れていいですか?」 「へえあっ!?」  言うや否や篠原陸翔がベロリと自分の指を舐めて唾液で濡らしてから、私の中に入れてきた。 「ひうううっ」 「確かに狭いですね……」 「や、やああんっ」  ツプン、と篠原陸翔の指が体の中に入ってくる。  嘘! ありえない! 「すごい締め付けだ……温かい」 「ヤダ、入れないで、入れないでよぉ……」  しかも、ハアハア言ってるのなんでよ! 「これは……処女で間違いなさそうですね」 「当たり前でしょっ! ね、もう、お腹がくるしいの。あなたの指は太いから……やっ」  私が懇願すると指が中でクン、と動かされた。 「でも、もっと太いものを入れるんですよ」 「え」 「子作りするんですよね」 「そ、そうですけど……んっ」  篠原陸翔の指が私の中から出て行く。もう、終わりだよね? しかし半泣きの私の手を取った篠原陸翔は自分の股間へと押し付けた。ええと……。 「陸翔様のズボンになにか入ってますよ」  私がそう指摘すると彼は片手で顔を覆って真っ赤になった。 「まさか……ははは」  彼は大笑いしてボフン、と私の隣に寝転んだ。 「すみません、今日は飲みすぎました。あなたもお疲れでしょう」 「……はい」  なにかに納得した篠原陸翔は横たわるとすぐに寝息を立てた。これは私が処女だと信じたのだろう。人騒がせな……。身構えていたので、ホッとした。  さすがに飲み過ぎたのだろう。誰がこんなに飲ましたかは知らないけど、よくやった!  これは……初夜は回避?? 処女確認なんて聞いたことないけど……ぐすん。 「……」  美しい顔は目をつぶっていてもお美しい。ムカついてその顔を見ていることもできず、私はソファに移動して寝ることにした。  篠原陸翔の説教を思い出す。『自己管理できない』という烙印を押された。否定しようにもその通り過ぎて何も言えない。  なんてこった。  結婚しても体重管理させられるとか冗談じゃない……。  その夜私は涙で枕を濡らしたが、それは決して愛しの夫との初夜を期待したのに、夫が泥酔してできなかったという話ではなかった。  子作りはしないに限る。  体重管理もしないに限る。
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