第八章『休暇』

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ショボンは普段ヘラヘラしているブーンの交渉能力に興味があった。 今後、冒険者稼業を続けて行くなら、他人との交渉の場に出くわすこともあるだろう。 そのチュートリアルとして、ブーンを試してみたかった。 思えば、初対面の時も、こちらの状況を素早く把握し、妥協案を提案して来た。 意外と頭がキレるタイプ、と言うのがショボンの感想だった。 ( ^ω^)「そうさねwwwまあ持っておいて損は無いおねwwwいざって時にあれば有難いモンだと思うお?wwwそう言うショボンは結構欲しそうだおね?www」 あくまでも弱みは見せず、それでいて揺さぶって来る。 ブーンには、この魔石の岩塊を最初に手に取ったと言うアドバンテージがある。 立場としては、こちらが不利だ。 (´・ω・`)「そう見えたかい?けど、ブーンもそう簡単には手放したくないんじゃないか?」 所有権の七割、いや、八割は向こうにあると考えるべきだろう。 それを揺さぶる。 ( ^ω^)「もちろんwww滅多に御目に掛かれない希少品ですからなwww執着もしますわwww」 その為には、シンプルだが、相応の品をチラつかせるのが定石だ。 しかし、目当ての品が欲しい余り、余分に価値を注ぎ込んでは赤字だ。 例えるなら、銀が欲しいからと言って、金を払うようなものだ。 それでは意味がない。 そんなことをすれば、味を占められその後もカモにされるか、その一回の交渉で用済みとされてしまう。 待っているのは破産か、奴隷のような苦しい生活だろう。 多少、大袈裟かも知れないが、そのくらいの覚悟で挑んだ方が良いのだ。 (´・ω・`)「なるほど。じゃあ、その岩塊よりも価値のあるものを持ってると言ったら?」 今のところブーンは良い線を行っている。 だから、こちらからも少し揺さぶってみる。 もし、『その岩塊を手放すなら、どんな物が欲しいか』や『その岩塊を手放す代わりに、何か欲しい物はないか』などと言ってしまえば、どれだけふっかけられるか分からない。 だからこそ、例え虚勢やハッタリでも、相手を揺さぶり、相手の興味を引く。 自身の底を見せないと言うのが大事だ。 ( ^ω^)「岩塊よりも価値がある物…!?www」 食い付いた。 直ぐに追い打ちを掛ける。 鉄は熱いうちに打て、では無いが、交渉もスピードが命だ。 相手に時間と思考を与える間も無く、追い詰めて行く。 (´・ω・`)「そうそう。岩塊は言っても、多少強い魔物なら誰しも落とす可能性がある。ゆくゆくは、価値が下がる。けど、固有の魔物の遺物は、そうそう代えが利かない。そう言う意味で言えば、岩塊の価値も大した物では無いと言えるよね?」 嘘は無い。 今回は黒竜騎士の魔力溜まりから取得した遺物の一つだったが、黒竜騎士限定の遺物という訳では無い。 この調子で腕を上げて行けば、いずれまた手に入るだろう。 それこそ、今回の黒竜騎士よりも弱い魔物から手に入る可能性もある。 幾らでも代えが利く品である事は確かだ。 (;^ω^)「む、むむむ…wwwそ、その品とは…一体何なのだ!www」 一転攻勢。 天秤はこちらに傾きつつある。 もうひと押しと言ったところか。 (´・ω・`)「言っても良いけど、岩塊を俺にくれると約束するなら言うよ」 ここに来て漸く、条件付きで要求を出す。 だが、切り札は明かさない。 限界まで勿体ぶる。 (;^ω^)「そ、そんな!www品を確認しない内にそんな事がーー」 (´・ω・`)「では、今回の交渉は決裂という事でよろしいか?残念だね。折角、良いものを手に入れるチャンスだったのに」 天秤が自分側に傾いたからと言って、油断は出来ない。 揺すりに揺すりを掛け、相手に決断を迫らせる。 (;^ω^)「ぐうぅぅぅ〜!!wwwま、待ってくれ!www分かった!www岩塊は譲る!wwwだから、その品が何なのか教えてくれ!www」 もう勝ちも同然だが、ダメ押しする。 (´・ω・`)「じゃあ、教えるから約束の岩塊」 目的の物を要求する。 (;^ω^)「は!?wwwいや、先に品が何なのかを明かすのが先だろう!www」 (´・ω・`)「約束したなら先に渡しても後に渡しても同じだろう?それとも、何か良からぬ事でも考えていたのか?言っておくが、約束を反故にするようなら交渉とは別に、慰謝料を請求するからそのつもりで」 相手が約束や契約を破る素振りを見せたら、徹底的に追い詰めるつもりで圧力を掛ける。 あくまでも強気でいることが大事だ。 (;^ω^)「そ、そんなつもりはないッ!wwwほら、これで良いだろう!www約束の岩塊だ!www」 ブーンが差し出して来た魔石の岩塊を受け取る。 ('A`)「あ、茶番終わった?」 すっかり蚊帳の外だったドクオが口を挟む。 ( ^ω^)「茶番とは失敬なwww」 先程とは打って変わって普段通りのブーン。 ('A`)「お前が余計に演技し始めるからだっつーの、この大根が。せめて草を生やすな」 確かにブーンの口調はあまりにも態とらしいものだった。 (´・ω・`)「確かに。今時、創作でも中々見ないよ。あんな露骨な悪役」 ( ^ω^)「ショボンまで辛辣wwwとは言え、勉強させて頂きやしたwww」 どうやら、ドクオの言う茶番でも、ブーンにはこちらの真意が伝わっていたようで何よりだ。 (´・ω・`)「そう言ってくれれば、ブーン劇場に付き合った甲斐があったな」 ( ^ω^)「ブーンwww劇場wwwやめれwww」 ('A`)「閑古鳥鳴いてそー」 ( ^ω^)「お前は黙っとれwwwそれはそうと、ショボンの言ってた価値のある物って結局何だったん?www」 (´・ω・`)「ああ、ブーンには黒竜騎士の武具を溶かした際に出たインゴットを俺の分あげようかなって」 銀を貰う代わりに、金を譲るようなものだが、ブーンは仲間だ。 仲間の戦力増強はむしろ、ショボンにとってプラスになる。 それに、その分の対価の請求は考えてある。 ( ^ω^)「えっwwwめっちゃ良いものじゃんwww良いわけ?www」 (´・ω・`)「その分、頑張って活躍してね」 仲間だからこそ出来る交渉だ。 ( ^ω^)「あっハイwww」 ブーンには、精々頑張って貰うとしよう。 勿論、ドクオにも、そして、岩塊を受け取った自分自身も。 (´・ω・`)「それと、他人との交渉時には、こんな良い待遇をしない事。冷遇するくらいが丁度良い」 とは言っても、冷遇し過ぎては交渉にならない。 程良い塩梅を見極めることが大事だ。 ( ^ω^)「勉強になります!www先生!www」
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