第八章『休暇』

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見積もり書には、加工に掛かる費用が武具毎に記載されていた。 簡単な加工ーー例えば魔石での強化などであれば、費用は安く済んでいる。 だが、進化などは使用素材との兼ね合いもあり、ピンキリだが、オーダーメイドになり易い為、強化より高く金額設定が為されている。 生産などは規格に沿った製品になる為、強化よりはコストがかかるが、安定している。 ( ^ω^)「おぅふwwwこいつは手痛い出費wwwでも必要コストだからしゃー無しwwwコラテラルダメージと言うものだwww」 新米冒険者ーー否、冒険者ならば皆、悩まされる装備品コスト問題。 ('A`)「そろそろかーちゃんから貰った路銀が尽きそうだな…冒険者登録して依頼熟さないと」 二人は未だ駆け出しと言うのもあり、装備品の強化は金額的にかなり厳しいものがあるだろう。 かく言うショボンも余裕があると言う訳では無い。 要らない素材を厳選し、売却する必要も出てくる。 ( ゚∋゚)「あら、貴方達まだ冒険者登録して無いの?」 そこで声を掛けて来たのはクックル。 (´・ω・`)「俺は既に登録済みだよ。未登録はこの二人」 ブーンとドクオがそれぞれ主張する。 ( ゚∋゚)「それはちょうど良いわ!」 すると突然、クックルが声を上げる。 ( ^ω^)「ちょうど良いとはwww」 するとビコーズが一枚の紙切れをクックルに渡す。 クックルはそれをカウンターの上に叩き付ける。 ( ゚∋゚)「今、丁度ギルドで冒険者登録キャンペーンをやっていてね!今なら冒険者登録すると、ウチでの各種料金が下がる上、ポイントが付いてお得なのよ!加えて、既に登録済みの冒険者にも、仲介料的にポイントが付与されるわ!」 ('A`)「料金が下がるのは良いけどポイント?」 (´・ω・`)「《ギルドポイント》って言ってね。ギルド関連の施設での支払いに使えるんだ。持っておいて損はない」 ( ^ω^)「そりゃあ良いwww」 キャンペーン込みで見積もりを再算出する為に、ビコーズが三人から見積もり書を回収する。 その待ちの間、三人は装備品コーナーを見ていた。 ブーンとドクオの二人は、未だに装飾品を一つしか持っていない。 この際に一つ購入してみてはどうかとショボンが提案した。 装備品コーナーはガラスケースの中にあり、指輪やネックレス、タリスマンなど、多岐に渡る。 クックルから借りたカタログと交互に睨めっこしながら悩みに耽る。 (;'A`)「くっ…この《刃の指輪》、めっちゃ欲しい!ああっ、でもこっちの《剣の指輪》も良いし、《狩人の指輪》も良い!あぁー!《二刀剣士の伝承》のタリスマンも良い!悩む!」 ( ^ω^)「この《傭兵剣士の伝承》ってタリスマン凄く良いwww《重騎士の指輪》も良さげwwwあー、《大剣のタリスマン》もありwww」 二人の様子をショボンは微笑ましく眺めている。 ( ゚∋゚)「じゃあショボンちゃん、これ、見積もり書ね」 二人を気遣って、クックルは小声でショボンに話しかける。 (´・ω・`)「ああ、くっくちゃんありがとう。こっちはもう少し時間掛かりそうだよ」 クックルは微笑みながらショボンにウィンクする。 ( ゚∋゚)「良いわよ。ゆっくり悩みなさいな。アタシは裏に回るけど、ビコーズを置いておくから、何かあったらビコーズに声を掛けて頂戴ねん」 (´・ω・`)「ああ、分かった。ありがとう」 最後にもう一度ウィンクをし、クックルは恐らく鍛治工房だろうカウンターの奥へと消える。 それから十分後、二人は漸く購入する装飾品を絞り、ビコーズに声を掛けた。 (;゚A゚)「ビコーズ!この《剣の指輪》で!」 ( ^ω^)「俺っちは《重騎士の指輪》でwww」 それぞれが装飾品をカウンターに置く。 ( ∵)「お買い上げありがとうございます…!キャンペーンが適用され、三割引きでこのお値段となります…!」 代金を支払い、ドクオは包装されていない指輪をそのまま手に取る。 (;'A`)「くぅう…!このお値段でアレもアレも買えたと思うと…!ぐぬぬぬぬぬ…」 その指輪を握りながら、ドクオは唸る。 (´・ω・`)「まあ、装飾品はそんな幾つも付けられないからね」 ショボンは励ますようにドクオの肩を叩く。 ( ^ω^)「まあ、またの機会があるさ…www」 そう言うブーンも遠い目をしていてノーダメージでは無さそうだ。 ( ∵)「それでは、ご注文の武具は明日の昼頃を目安に完成となりますので、その頃にまたご来店ください…」 そう言ってビコーズがぺこりと頭を下げる。 ( ^ω^)「そう言えば、このお店ってくっくちゃんとビコっちゃんの二人だけなん?www大変じゃん?www」 ブーンがそう言うと、ビコーズは何やら言いたげに、だが言うか迷っている風に左右に揺れる。 (; ∵)「あっ…えと、あの…その…」 困惑して揺れるビコーズを前に、ブーンは膝を突いて目線を合わせる。 ( ^ω^)「なんかあったら、俺らに言ってみ?www」 暫し迷っていたビコーズだったが、ブーンがずっとその様子を見守り、後ろの二人も一切、異論を発さない。 故に、ビコーズは我慢の限界を打ち砕き、内に秘めたものを言葉として吐き出した。 (; ∵)「あっ、あのっ!お兄ちゃんを探してくれませんかっ!」 ビコーズは恐る恐る、三人を見上げる。 ( ^ω^)「良し!www良く言えました!www」 ブーンは朗らかな顔を更に破顔させる。 ('A`)「お兄ちゃん、か。人探しって事だな」 ドクオは真面目に考え込んでいる。 (´・ω・`)「それじゃあ、詳しく話を聞こうか」 ショボンがビコーズに優しく問い掛ける。 (; ∵)「その前に…あの、良いんですか?こんなこと…」 ( ^ω^)「良いの良いのwww要はお願いも一種の依頼でしょ?クエストのチュートリアルみたいなもんwww」 ('A`)「全くお前はいっつも面倒事に首突っ込むんだからよ…。とは言え、困っている人を見過ごすことが出来ないのも事実だな」 (; ∵)「で、でも、私はお金なんて持ってないし…」 ( ^ω^)「いや、お金なんてーー」 (´・ω・`)「ブーン、ストップ」 ( ^ω^)「え?www何?www」 (´・ω・`)「チュートリアル失敗」 ( ^ω^)「……あーwww対価を貰わずに依頼を受けようとするなって?wwwでも今はーー」 (´・ω・`)「ブーン、例外はない。冒険者として活動する以上、労働に見合うだけの対価を求める。それは最も重要な事だ。そうでなければ、俺たちだけじゃない。他の冒険者が俺たちの知らないところで割りを食う羽目になる。冒険者全体の問題なんだ」
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